【要請】神戸市長、神戸市環境影響評価審査会による神戸製鉄所火力発電所(仮称)設置計画に係る市民意見の再度の聴取について(2018/02/14)

2018年2月14日

神戸市長

久元 喜造 様

神戸市環境影響評価審査会

会長 武田 義明 様

副会長 山下 淳 様

 

神戸の石炭火力発電を考える会

 

神戸市環境影響評価審査会による神戸製鉄所火力発電所(仮称)設置計画に係る

市民意見の再度の聴取について【要請】

 

私たちは、下記の理由により、神戸市及び貴審査会において、神戸製鉄所火力発電所(仮称)設置計画に対する市民意見の聴取を、再度行うよう求めます。

 

 

 2017年7月に神戸製鋼所により準備書が公告されて以来、貴審査会では、これまで7回にわたって慎重な審議が行われてきました。これと平行して、神戸製鋼所は、7月から8月にかけて環境影響評価法に基づく説明会を開催し(ただし、一方向の質疑応答に終始しました)、市民意見の聴取などの手続を進め、また、神戸市は、神戸市環境影響評価等に関する条例(以下「市条例」という。)に基づく公聴会を同年8月20日に開催したところです(同公聴会においては、39名の市民公述人全員が計画に反対の意見を表明しました)。

 

しかし、以上のような市民参加のプロセスには、

環境影響評価法及び市条例の趣旨に反する、以下のような問題があることが判明しました。

 

①市民が求める環境情報が事前に提供されず、市民参加手続の後に公表されたこと

 神戸製鋼所が行った4度の説明会において、市民は、大気汚染物質の総排出量の変化や、水銀排出量等について幾度となく質問をしましたが、神戸製鋼所はこれに対し一切の回答を拒絶しました。この点について、上記の説明会、公聴会が終了し、市民意見の提出が締め切られた後、貴審査会における審議の過程で、審査会委員が、大気汚染物質の排出量の増減も含め準備書に記載されていない点の説明を求めたことから、神戸製鋼所はようやく補足説明資料を提出しました。神戸製鋼所が、様々な機会をとらえて、周辺住民に対し、“高炉が廃止することにより事業所全体からの大気汚染物質の影響は減少する”と説明してきたことに鑑みると、このような神戸製鋼所のふるまいは、非常に悪質な行為であるといわざるをえません。大気汚染物質の総排出量が大幅に増加することを隠したまま、市民意見提出手続や説明会・公聴会の手続を終えたことは、大気汚染物質の総排出量が増加するという事実に対して市民が環境保全の見地からの意見の表明をする機会を奪うものであり、環境影響評価法の準備書手続における市民参加制度の趣旨を没却させるものです。

 

②市民参加手続後に、膨大な準備書補足資料が提出されたこと

 神戸製鋼所は、環境影響評価準備書の市民参加手続が終了してから、貴審査会に対し、準備書の補足説明資料17~資料21を提出しました(2017年9月20日、10月4日)。

 これらの補足説明資料の分量は量的にも膨大なものです。また、その中には、質的にも重要な環境情報が含まれています。たとえば、

・方法書に対する知事意見及び市長意見が、準備書に記載すべきであると求めた地域における温暖化対策の内容は、準備書に含まれておらず、市民参加手続が終了した後に、貴審査会に求められてようやく補足説明資料として提出しました。

・市民が環境保全の観点から重大な関心を寄せている、大気汚染物質の年間排出量の増減(前述)、PM2.5についての予測、水銀に関する記述が、補足説明資料として提出されました。

・NO2の環境基準について、準備書では、環境基準の上限値を用いて環境基準の年平均相当値を算出していましたが、審査会委員の批判を受け、これを補足説明資料18で改めました。同資料では、将来環境濃度が最大となる灘浜局、六甲アイランド局及び住吉南局は、環境基準の年平均相当値の下限値と上限値の間のゾーン内にあること―つまり、環境基準告示によれば、現状非悪化が要請される地域とであること―などが示されました。(当会「神戸製鉄所火力発電所環境影響評価準備書に対する神戸市長意見作成にあたって 第3次要請書」(2017年10月16日)参照)。準備書では、NO2の環境基準が適切に表示されておらず(1時間値の1日平均値で示されておらず、また、環境基準の上限値のみで記載)、事業実施区域周辺が、環境基準告示により、現状非悪化が要請される1時間値の日平均値0.04ppm~0.06ppmのゾーン内にある地域であることが示されたのは、市民参加手続が終了した後だったことになります。

 

 昨年8月の公聴会、市民意見の提出手続は、量的にも、質的にも、不適切かつ不十分な準備書を基に行ったものです。「補足説明資料」の記載内容は、本来、準備書に記載されるべき事柄を多く含んでおり、改めて市民が環境保全の意見を表明する機会を設けるべきであると考えます。

 

③準備書について数百か所に及ぶ修正が行われたこと

 さらに、2017年10月の神戸製鋼所の製品データ改ざん問題に関係して、本件準備書作成に用いられたデータの検証も必要との観点から、兵庫県及び貴審査会における審査も中断を余儀なくされてきました。2018年2月1日に開催された神戸市の第172回環境影響評価審査会では、本件準備書等で使用されたデータに対して行われた検証の結果について審議されました。神戸製鋼所のデータ改ざん問題を受けて実施されたこの検証においても、検証の結果、極めて多数のデータの「誤記入・転記ミス」が発見され(市審査会で145カ所、12月28日の県審査会で230カ所の指摘)、データ数値が修正されることとなりました。しかし、その理由について神戸製鋼所から合理的な説明がなされず、また神戸製鋼所は自主検証結果報告において「・・・予測結果の上下はあったものの、その変動幅は小さく、準備書の環境影響評価結果に影響を及ぼすものはなかった。」と結論づけました。この点について、貴審査会委員から様々な指摘・疑問が呈され、貴審議会は「検証経緯の説明が不十分」であり、データの信頼性の確認ができないなどとして、予定していた審査会答申の審議延期を決定されました。

 準備書の環境影響評価の根拠となるデータについて、これほど多くの数値の修正が必要となったことは、昨年7月に公開した準備書がいかに杜撰な作りであったかを明らかにするものといえます。市民参加のプロセス終了後に審査会からの指摘を受けて膨大な補足説明資料が提出されたこと、準備書が今回のデータ修正でつぎはぎされたことに鑑みると、本件準備書は、もはや“準備書”の体を為しておらず、信頼度はないと言わざるを得ません。環境影響評価は情報公開のもと市民との信頼関係の上に成り立つものです。しかし、神戸製鋼所にはそのような基本認識が欠如しているといわざるをえません。

 

④知事意見提出期限は、まだまだ先であること

 環境影響評価法によると、兵庫県知事の意見提出期限は、事業者見解の提出後120日以内となっています(同法施行令12条1項)。本件の場合、最初の事業者見解は、2017年9月に提出されており、その時点を起算点とすると、既に知事意見の提出期限は過ぎています。しかし、兵庫県などは、データ改ざん事件の後、環境影響評価手続が中断していたことから、改めて提出される事業者見解の期日を起算点として、兵庫県知事の意見提出期限を設定していると聞いております。

 知事意見の提出と、それに先立つ神戸市長意見の提出にかかる環境影響評価法上の期限は、3か月以上先になるはずです。本件は、重大な環境影響を惹起しうる大規模石炭火力発電所の設置にかかる審査であることから、環境影響評価法及び市条例の趣旨に即して、市民参加の機会を保証したうえで、市民意見を勘案した慎重な審議を引き続き行っていただくよう要請します。

 

【要請】

 昨年8月に事業者に対して提出された市民意見や、市主催の公聴会における公述人の発言録は、事業者による補足説明資料の提出前、かつ、データ改ざん問題発生以前に作成公表された準備書に対してなされたものです。上記①~③のとおり、当初の準備書からは、その内容が大幅に追加・修正されており、また、準備書の基礎となるデータ及び評価に対する信頼性も大きく揺らいでいます。

 環境影響評価の最も重要な過程として、準備書の公告縦覧、説明会を行い、住民ら一般からの意見を受けつけるということが、国・県・市いずれの法令にも規定されています。神戸製鋼は、補足説明資料、 “自主検証”による準備書修正資料などを提出してきましたが、この神戸製鋼の行為は、公告・公開縦覧・説明会・意見書受付の過程を経ずに、事業者が事後的に準備書を変更しようとしていることに他なりません。このような行為が許されるなら、第三者性や住民参加を担保する柱ともいうべき制度上の過程は無意味となり、環境影響評価制度の根底が崩れることにもなりかねず、大いに危惧されます。

 このような状況の下では、環境影響評価法及び市条例の市民参加手続規定の趣旨に鑑み、市民には、再度、市民意見の提出や公聴会における公述の機会が、それぞれ神戸製鋼所や神戸市によって与えられなければならないと考えます。また、貴審査会において、公害認定患者のみならず多くの市民や環境保護団体から構成される当会や、その他の環境保全の見地からの意見を有する市民が、口頭で意見を述べる機会を設けていただくよう要請します。

以上

 

【連絡先】神戸の石炭火力発電を考える会

HP:https://kobesekitan.jimdo.com/

Mail:kobesekitan@gmail.com

TEL:080-2349-0490

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神戸市長への市民意見再聴取要請書
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神戸市環境影響評価審査会への市民意見再聴取要請書
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