【声明】環境大臣意見を受けて(2018/4/3)

【声明】

2018年4月3日

神戸製鋼の石炭火力発電所設置計画に対する環境大臣意見

2030年及びそれ以降の温暖化対策のため、事業実施の再検討を要請

事業者は、地球環境・地域環境保全のために石炭火力発電所の建設を中止せよ

 

神戸の石炭火力発電を考える会

 

 環境大臣は、3月23日、神戸製鋼が神戸市灘区において建設を計画している石炭火力発電所(神戸製鉄所火力発電所(仮称)設置計画)にかかる環境影響評価準備書に対する環境大臣意見を公表しました。大臣意見は、「2030年度及びそれ以降に向けたCO2排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には事業実施を再検討すること」を求めています。中川環境大臣は、同日の閣議後会見で、「再検討は一から考え直すということ。選択肢には事業計画の中止や撤回も含まれる。厳しい意見を述べた」と話しました(神戸新聞3/23)。

 3月16日に、兵庫県知事が、発電所建設に伴ってCO2排出の増加を認めないという意見を経済産業大臣に提出したことに続き(当会の3月20日付け声明参照)、環境大臣も、温暖化対策の観点から、これ以上の石炭火力発電所の建設に反対する立場を表明したものです。私たちは、神戸南部・芦屋・西宮などに居住する多くの市民と共に、神戸製鋼に対し、温暖化対策のみならず大気汚染の観点からも最悪の燃料である石炭火力発電所を、150万都市・神戸の人口密集地から400mという他に類を見ない最悪の立地で建設することを断念するよう求めます。

 経済産業大臣にあっては、配慮書・方法書・準備書の各手続において提出された市民意見、神戸市及び兵庫県が主催した公聴会における公述意見、知事意見、環境大臣意見の指摘等に耳を傾け、本計画を中止させることを求めます。

 

1. 温暖化対策について

 大臣意見は、①世界各国で、石炭火力発電所からの投資の引き上げ(ダイベストメント)の動きが揺るぎないものとなっていること、②他方で、国際機関の報告書において、日本は石炭火力の新増設計画が集中している国として挙げられていると指摘しています。③日本の石炭火力発電所全体からの現在のCO2排出量は、2030年目標達成のための想定排出量を既に大幅に上回っており、日本の石炭火力新増設計画が全て実現した場合には、2030年における設備利用率は54%以下としなければならず、神戸製鋼の計画も「環境保全面から極めて高い事業リスクを伴う」と指摘しています。

 大臣意見は、「2030年度及びそれ以降に向けた本事業に係るCO2排出削減の取組みへの対応の道筋が描けない場合には事業実施を再検討することを含め、事業の実施についてあらゆる選択肢を勘案して検討する」ことを求めています。石炭を燃料として30年以上も発電する本件発電所の建設は、2030年目標、及び、温室効果ガス排出量を80%削減するという日本の2050年目標の達成を阻害するものであり、全く容認することはできません。

 

2. 大気環境について

 大臣意見は、大気環境に関し、「本事業の対象事業実施区域及びその周辺は、〔NOx・PM法〕に基づく対策地域とされている。また、同区域の周辺は過去に深刻な大気汚染による健康被害が発生し、現状においても大気の汚染に係る環境基準の一部を達成していない地点が存在するなど、大気環境の改善が必要な地域である」と指摘しています。そのうえで、「本事業は、人口密集地であり、かつ、既存の製鉄所及び発電所が存在する地域において、環境負荷を増大させる事業である」、「対象事業実施区域の周辺には、学校、病院その他の環境の保全についての配慮が特に必要な施設や多数の住居が存在する」と述べています。発電所の建設予定地としては、他に類を見ない不適切な場所であり、ばいじん、窒素酸化物、硫黄酸化物、浮遊粒子状物質等の大気汚染物質を大幅に増加させる石炭火力発電所を、敢えてこの地に建設することは、当会が指摘してきたように、これまでの公害対策を無にする暴挙といわざるをえません。

 

3. 環境影響評価手続上の問題点について

 昨年10月に神戸製鋼のデータ改ざん問題が発覚し、兵庫県及び神戸市は、アセスデータの検証作業に追われました。当会は、この検証作業について、準備書の根拠となるデータに数百か所の数値の修正が必要となったことは、昨年7月に公開した準備書がいかに杜撰な作りであったかを示すものであると指摘しました。そして、改ざん事件以前にも、市民参加のプロセス終了後に神戸市の審査会委員からの指摘を受けて膨大な補足説明資料が提出されたこと(たとえば、神戸製鋼が、大気汚染物質の排出が大幅に増えることを隠したままで市民参加手続が行われ、参加手続の後に、神戸市の審査会に強いられて当該データを提出したことは、市長意見が指摘するように重大な問題です。)

 さらに、準備書が今回のデータ修正で幾重にもつぎはぎされたことに鑑みると、本件準備書は、もはや“準備書”の体を為しておらず、環境影響評価手続、特に、市民参加手続をやり直すべきである、と主張してきました。

 この点については、神戸市長の意見書においても、事業者の姿勢につき、「準備書等の修正の内容は、直ちに神戸市環境影響評価審査会委員の理解を得られるものでなかった」、「準備書に係る事業者の情報提供の姿勢には問題があると言わざるを得ない」と指摘されているところです。また、知事意見書も、「計画段階環境配慮書手続から準備書手続の各段階において、事業者の説明が不十分である等の住民意見が多数出ている」との認識を示しています。それにもかかわらず、環境影響評価手続のやり直しを求めないのは、市民参加手続の意義を無視するものであり、また、神戸製鋼の主張を代弁するようなものといわれても仕方がありません。

 

以上。

神戸の石炭火力発電を考える会

住所:神戸市灘区山田町3-1-1(公財)神戸学生・青年センター内

TEL:080-2349-0490

Mail:kobesekitan@gmail.com

HP: https://kobesekitan.jimdo.com/

ダウンロード
神戸製鋼の石炭火力発電所設置計画に対する環境大臣意見 2030年及びそれ以降の温暖化対策のため、事業実施の再検討を要請
180403大臣意見に対する声明.pdf
PDFファイル 96.9 KB