【抗議声明】大気汚染の大幅な悪化を容認する、神戸製鋼との環境保全協定の改訂は容認できない(2018/09/04)

神戸市長 久元喜造 様

2018年9月4日

抗 議 声 明

大気汚染の大幅な悪化を容認する、神戸製鋼との環境保全協定の改訂は容認できない

 

神戸の石炭火力発電を考える会

 

神戸市と、神戸製鋼・コベルコパワー神戸第1・コベルコパワー神戸第2(以下、「神戸製鋼ら」という。)は、本年8月30日、神戸製鋼らによる石炭火力発電所の新設計画を前提として、既存の環境保全協定を改訂(以下、新協定)したことを公表しました。環境保全協定は、産業施設等によって悪影響を被る可能性のある市民の健康と生活を守るために、市民に代わって、神戸市が締結するものであり、環境保全協定の真の当事者は、地域住民です。今回の新協定は、旧協定から改善された点もありますが、以下のような重大な問題があり、環境対策の強化を強く求めた市民の声を顧みることなく、新協定を締結した神戸市に対し、強く抗議します。

 

1. 大気汚染物質の排出増を容認

発電所周辺は、大気汚染公害に苦しめられてきた地域であり、現在も環境回復の途上にあり、大気汚染物質の排出量については、厳格に管理かつ、総量を減らすことが極めて重要な地域です。また、神戸製鋼は、神戸市域における大気汚染物質の大きな固定発生源です。しかし、新協定は、現状と比べて大気汚染物質(硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじん)の大幅な排出増を認めるものとなっています(資料参照)。

新協定値は、①3号機供用開始前、②3号機供用開始後、③3・4号機供用開始後と3段階に分けて環境保全協定値を設定しています。そのこと自体は適切であると評価できますが、③段階での協定値は、「現状」から比べて、大幅な排出増を容認するものであり、未だ環境回復の途上にある地域の環境管理者としての市の対応は不適切です。図の棒グラフ①と③を比べてみれば明瞭です。このことは旧協定値の製鉄部門排出量をあたかも神戸製鋼の排出既得権のように見なしていること、あるいは見方を変えれば、上工程廃止を石炭火力増設に伴う「環境対策」とみなしていることを意味するわけで、不断に環境保全を追求するという環境保全協定の趣旨にもとる扱いで、かかるゴマカシに等しいような協定は許されません。

 

2. 実効的な温暖化対策が盛り込まれていない

今回の新協定においては、温暖化対策について明記されたことは評価できます。新しい協定はアセス手続きで市長が求めた「地球温暖化への対応」等を「長期にわたって着実に実施させるための協定」であるとしていますが、実効的な対策が盛り込まれておらず、対策の内容が全く伴っていません。例えば、省資源、省エネ、高効率運転の維持、CO2吸収源対策、CO2回収・貯留などが示されていますが、あまりにも抽象的なもの、あるいは実現可能性がほとんどないものです。特に、バイオ燃料の活用や水素供給による燃料電池自動車普及への貢献があげられていますが、発電所の稼働によって排出されるCO2総排出量(690万トン)の僅か1万トン(0.14%)の削減にしかなりません。 また、神戸市は国から環境モデル都市として選定されており、自治体温暖化対策をリードすることを自ら表明しています。一方、世界では「脱石炭」という大きな流れが生まれています。2017年には国や地方政府、企業・機関によって「脱石炭に向けたグローバル連盟(Powering Past Coal Alliance)略称:PPCA)」が結成されました。加盟するには、石炭火力発電所の段階的廃止、新設停止を宣言することなどが条件です。このような世界の潮流から見れば、新たな石炭火力の立地を容認し、温暖化対策、エネルギー政策は国の政策次第とする神戸市の対応姿勢は「周回遅れの環境モデル都市」と言わざるを得ません。

 

3. 神戸市は、説明責任を果たしていない

当会は、協定の改訂にあたって、1158名にも及ぶ署名提出や要請書の提出を通じ、環境保全措置の強化を求める声を届けるとともに、事業者との環境保全協定の改訂交渉における透明性の確保を求めてきました。しかし、こうした市民の声を顧みることなく、突然、新協定の締結が公表されました。神戸市が、一切、説明責任を果たさず、協定の改訂交渉を密室で行ってきたことは大変遺憾です。 また、市内数箇所で、限られた時間・場所でしか公開されていない、大気汚染物質などの常時モニタリングをさらに発展させるべく「発電所からの汚染物質等の排出について、インターネットでの常時公開」を求めました。インターネットを活用した常時公開は、アメリカにおいて実現されており、技術的に実現可能なものです。現在、神戸市が常時モニタリングを行っていますが、情報アクセスを容易にし、第三者の関与によって、さらなる透明性の確保が可能となります。このことは、事業者の社会的責任・信頼を高めることにつながり、強いては「厳しい協定」と呼ぶに相応しいものになりますが、新協定には盛り込まれませんでした。 このほか、環境影響評価の最中に、事業者の製品データ改ざん問題があり、これを受け、兵庫県、神戸市による膨大なアセスデータの検証作業が行われました。行政職員の労力、税金を使っての再検証作業が必要となったことは、納税者である市民にとって大変遺憾なことで、神戸製鋼から市民へ説明も一切ありません。 当会は、知事意見、市長意見、環境大臣・経済産業大臣意見の趣旨に鑑み、神戸市長に対して、準備書における神戸市長意見の趣旨を実現するためには、環境保全協定再締結前、かつ、電気事業法に基づく工事計画届出の提出前に、市民向けの説明会を開催するよう指導すべきであると要請しました。しかし、それをせず、石炭火力の新設を前提とし、大気汚染物質の大幅な排出増加を容認する環境保全協定の改訂を行ったことは、大変遺憾です。

 

当会は、既設・新設の石炭火力発電所が排出する大気汚染物質の影響、地球温暖化防止の観点から石炭火力発電所の新増設を問う、公害調停を呼び掛け、調停申請人481名の方々と共に、社会・地域に訴え掛けました。パリ協定の発効以降、世界の温暖化対策のあり方が大きく問われており、とりわけ、石炭火力を巡る情勢は大きく変わってきています。これからも、神戸の石炭火力問題を通じ、多くの市民、団体と共に力を合わせ、石炭火力の建設・操業の中止を求めて活動してまいります。

 

以上

 

今回の協定が意味するのは、「排出増」の容認
今回の協定が意味するのは、「排出増」の容認

【問い合わせ先】

神戸の石炭火力発電を考える会(HP: https://kobesekitan.jimdo.com/)

住所:神戸市灘区山田町3-1-1(公財・神戸学生青年センター内)

TEL:080-2349-0490

MAIL:kobesekitan@gmail.com

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【参考】

・神戸市との環境保全協定の再締結について(2018年8月30日 株式会社神戸製鋼所)

http://www.kobelco.co.jp/releases/1199976_15541.html

・(株)神戸製鋼所、(株)コベルコパワー神戸及び(株)コベルコパワー神戸第二との環境保全協定の再締結(神戸市2018年8月30日)

http://www.city.kobe.lg.jp/information/press/2018/08/20180830190501.html

・第162回 神戸市環境影響評価審査会(2017(平成29)年10月4日開催)資料21

http://www.city.kobe.lg.jp/information/committee/environment/eia/img/mat21_162nd.pdf

・第161回神戸市環境影響評価審査会(2017(平成29)年9月20日開催)資料18

http://www.city.kobe.lg.jp/information/committee/environment/eia/img/mat18_161st.pdf

・神戸地方気象台「兵庫県の気候変動」

https://www.jma-net.go.jp/kobe-c/shiryou/kiko_hendo/currenttemperature.pdf

・神戸製鉄所火力発電所環境影響評価準備書 意見作成にあたって第3次要請書(2017年10月6日)

https://kobesekitan.jimdo.com/press-release2017-10-06/

・神鋼との環境保全協定の改訂にあたり、市民・神戸市議会を対象として説明、意見聴取することを求める緊急要請書

https://kobesekitan.jimdo.com/press-release2018-8-03/

 

・情報開示について(世界の事例)

発電所に関する情報開示、世界に遅れをとる日本

http://sekitan.jp/info/power_plant_disclosure/ ( Don’t go back to the 石炭)