【声明】神戸発電所3号機の試運転開始への抗議文を送付(2021/05/08)

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神戸の石炭火力発電を考える会

FridayFor Future KOBE

【声明】

神戸発電所3号機の試運転開始への抗議文を送付

 

新聞報道(8日)によると、神戸製鋼所は、神戸線条工場内(神戸市灘区)に201810月より建設工事を進めていた石炭火力発電所において、55日に「火入れ」を行ったことが分かりました。今回の火入れは、発電所の営業運転開始に向けた、事実上の「試運転」にほかなりません。

 

神戸製鋼所は、大気汚染公害被害に長きに渡って苦しめられてきた被害者や地域事情を考慮しないばかりか、気候危機の最中、脱石炭が求められているにもかかわらず、新たな石炭火力発電所を稼働させました。当会は、そのことに強く抗議し、(株)神戸製鋼所社長 山口貢氏、(株)コベルコパワー神戸第二社長 木本総一氏に抗議文を送付しました。

 

石炭火力発電所は、火力発電所のなかでも大気汚染、気候変動への影響が大きなものです。発電所周辺は、高度経済成長期、激甚な大気汚染公害に見舞われた地域で、多くの住民が公害に苦しめられました。今でも、国、県による重点的な大気汚染対策が続けられており、一部企業の取り組みによって改善が図られてきたものです。また、国連のグテーレス事務総長からも、気候変動対策として石炭火力発電所の全廃の必要性が呼びかけられ、先進国における脱石炭が強く要請されているところです。

こうした地域環境・地球環境の情勢を受けても強行する神戸製鋼所の石炭火力発電に対して、環境悪化を懸念する住民は、新たな石炭火力発電所の建設は、環境保全の見地から容認できず、新設発電所の計画を中止することを要請してきました。

 

神戸製鋼が事業を強行した背景には、国のエネルギー政策が石炭火力発電所を重要な電源として位置づけていることにあります。また、発電所の建設が見直されないのは、大気汚染、気候変動の観点を考慮せず、発電事業の開始を認めた経済産業大臣の誤った判断が一因となっています。

 

地域環境・地球環境を保全するためには、石炭火力の立地を認めることはできないと、2018914日、神戸製鋼所、コベルコパワー神戸第二および売電先の関西電力に対して、原告40名が建設及び稼働差止めを求める民事訴訟を神戸地方裁判所に提訴しました。また同年11月には、12名の原告が発電事業を認めた経済産業大臣の判断の取り消しを求める行政訴訟を提起しました。当会はこれらの訴訟を支援し、問題意識を共有する全国の訴訟サポーターと共に、大気汚染、気候変動による人権侵害について、法廷で闘っています。

 

20201026日、菅首相は2050年温室効果ガス実質排出量ゼロを表明しました。また、本年4月には、203026%削減(2013年比)目標を46%へと引き上げることを表明しました。新しい3-4号機は、これから30年間稼働すると想定されることから、脱炭素の動きにも逆行するもので、全く容認されるものではありません。3号機の試運転を直ちに停止するとともに、4号機の建設工事中止を改めて強く要求します。

阪神湾岸は、工業地帯として発展し、それに伴い大量の大気汚染物質が排出され、多くの住民が公害に苦しめられました。公害患者は、次世代に「手渡したいのは青い空」を掲げ、公害裁判を経て、被告企業らと和解しました。神戸製鋼所も、公害裁判における被告企業の一社です。

西淀川公害患者と家族の会は、神戸製鋼所へ、新たな石炭火力発電所の建設は、和解の約束に反するとして、建設計画を中止するように要請してきました。

「神戸製鋼所はかつて、石炭火力発電所のある場所に高炉を構えていました。大量の大気汚染物質を排出して健康被害を引き起こし、私たちが大気汚染公害訴訟を起こしたときの被告企業の一つでした。1995年に和解したときには、その責任を認めて謝罪し、「環境対策に最大限の努力」することと「公害環境対策の内容について、皆様のご理解を賜るよう、より一層努力する」ことを約束しました。今回の試運転開始は、私たちとの約束を反故にし、住民の健康と地球環境を危機に陥れるものです。」と述べています。

 

気候変動による影響をより強く受ける可能性がある、若者も声をあげています。気候変動対策の強化を求めて活動する若者グループFridayFor Future KOBEは、試運転開始に対して、

「私たちは気候危機の時代に生きることになりました。国際社会は連帯して持続可能な経済へと転換しようとしています。神戸製鋼所はこれまでの経営方針から舵を切る事はなく、市民の声を無視して神戸発電所34号機の建設を進めてきました。今後、日本も“カーボンニュートラル”の為にあらゆる手段を尽くす事となり、石炭火力発電事業への風当たりも増す一方です。

KOBELCOの目指す「安全・安心で豊かな暮らしの中で、今と未来の人々が夢や希望を叶えられる世界」はサステナビリティという見せかけの看板を掲げていても実現されません。倫理的・社会的な側面から方針の見直しを行い、石炭火力事業からの撤退を表明することを求めます。」と述べています。

 

今後も当会は、地域・地球環境保全のために行動するあらゆる世代の市民、団体と連帯し、神戸の石炭火力問題を通じて、エネルギー政策の転換、環境問題の解決に尽力していきます。

 

以上。

 

【連絡先】

神戸の石炭火力発電を考える会

メール kobesekitan@gmail.com

TEL:080-2349-0490

【声明】神戸発電所3号機の試運転開始への抗議文を送付(PDF)

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