【意見】「兵庫県地球温暖化対策推進計画」(改定案)に対する意見を提出しました

2月18日から3月10日まで実施された「兵庫県地球温暖化対策推進計画」(改定案)に関する パブリック・コメント手続について、当会は下記の意見を提出しました。


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Ⅲ 計画の目標

【1.5℃目標の達成に貢献すると明記するべき】

4ページにおいて、グラスゴー気候合意について、「・世界の気温上昇を 1.5℃以内に抑えるために「努力を追求する」と成果文書に明記」としている。兵庫県の計画においても、グラスゴー気候合意を踏まえたものとするべきである。

 

該当ページ:2

Ⅲ 計画の目標

1.温室効果ガス排出削減目標

2.再生可能エネルギー導入目標

【2030年の削減目標48%(2013年度比)では1.5℃目標の達成は困難 60%以上とするべき】

 グラスゴー気候合意において、1.5℃以内に抑えるために努力を追求するとされている。現在の案である48%では1.5℃目標との整合が図られているとは言えない。日本が1.5℃目標の実現に貢献する排出削減として60%以上が必要との指摘がある。兵庫県においても、1.5℃目標実現のためにどの程度の排出削減が2030年時点で必要かについて、2050年目標からバックキャストで2030年の排出削減目標を設定するべきである。

 

【1.5℃目標達成のために再生可能エネルギーの導入拡大が不可欠 再エネ50%以上とするべき】

 2030年度に再生可能エネルギーによる発電量100億kWhとされ、県内における再エネ比率が約30%となっているが、国のエネルギー基本計画(38%)よりも低い数値となっている。これでは、温室効果ガスの大幅な排出削減を実現することができない。兵庫県として2030年における県内再エネ比率は、50%以上を目指すとするべきである。

また、そのための再エネを作る仕組み、企業や家庭において消費される仕組みづくりが必要。

 

該当ページ:18

CO2フリー水素について

【化石由来の水素は認めず、グリーン水素に限定するべき】

本計画案において水素は35箇所で登場することから、イノベーション技術として期待されていることが読み取れる。しかしながら、水素はエネルギーキャリアであり、石油等の一次エネルギーと同じように多用することには注意を払う必要がある。とりわけ化石由来の水素については、製造時の排出をCCS等によりCO2フリーとする動きがあるが、環境負荷が伴うほか、コスト低下までの時間を要する。このことから、どのように作られた水素か、水素として使う場面が適切かについて検討することが重要である。水素については、再生可能エネルギー由来のグリーン水素が望ましい。グレー水素、ブルー水素等は環境影響を考慮すれば望ましくない。

水素自動車は、世界的なEVの大量普及が予測されることから、貴重な水素を移動で消費することは、脱炭素化を社会全体で達成するうえで、適切とは言えない。

 

該当ページ:21

分野 仕事 エネルギー

CO2フリー水素の製造

石炭をはじめとした化石燃料火力発電から水素発電などへの転換

【石炭火力からの転換ではなく、2030年までの廃止が必要であり、県として事業者に求めるべき】

気温上昇を1.5℃以内を実現するには、先進国において石炭火力を2030年までに廃止する必要があるとされている。よって、県の計画においても明確に2030年までの廃止を各事業者に求めることが必要である。

また、「水素発電などへの転換」と書かれているが、県内では神戸製鋼所が石炭火力発電所においてアンモニア混焼から専焼への取り組みを公表している。このことから、現在、明確になっているものについては県民に周知する意味でも記載するべきではないか。

なお、アンモニア混焼による温室効果ガス削減量は僅かであり、温室効果ガスの大幅削減が必要とされている情勢からは、有効な対策として評価することはできない。よって、アンモニア混焼、水素混焼については兵庫県として大幅削減に寄与するのかについて検証したうえで計画に記載するべきである。国が、あるいは事業者が実施する姿勢を示しているから列記するだけであれば、効果的とは言えない誤った情報を県民に拡散する恐れがあることから、記載するべきではない。

記載するのであれば、事業者(神戸製鋼所)に対し、どの時期に、どの程度のアンモニアないし水素の混焼が可能なのか、その先の専焼を達成しうる時期、アンモニアや水素の混焼・専焼のCO2削減効果(ライフサイクルCO2削減効果)をヒアリングしたうえで、実際に削減が見込めること、削減量を検証したうえで、記載しなければ、計画として無責任であり、また、県民に誤解を与えることになる。

 

参考情報

日本の石炭新発電技術 報告:日本の電力部門の脱炭素化における石炭新発電技術の役割

(発行:transitionzero)2022年2月

https://www.transitionzero.org/reports/advanced-coal-in-japan-japanese

 

【ポジションペーパー】「水素・アンモニア発電の課題:化石燃料採掘を拡大させ、石炭・LNG火力を温存させる選択肢」

(発行:気候ネットワーク)2021年10月

https://www.kikonet.org/info/publication/hydrogen-ammonia

 

該当ページ:85

Ⅱ 推進体制

【新たな組織の設置ではなく、大幅削減につながる仕組みづくりが重要】

「産業部門の排出量の割合が多い本県では、事業者の取組が特に重要であり、脱炭素経営の取組が求められる中、とりわけ中小企業に対する支援が必要となってきているが」とされているが、県内に立地している火力発電所についても考慮する必要がある。県の排出量算定の中で、火力発電所については所内利用しか県内排出に含まれないことから県は、火力発電所の集中立地している現状を無視しているように見える。エネルギー政策は国が所管するものだが、温暖化対策をすすめる上で、エネルギー政策は避けて通れないものであり、中小企業や家庭における排出量にも大きく影響するものである。こうした上流から下流までのつながりを意識しない県の対応こそ、改善が必要であり、脱炭素や再エネ普及・利用が進むような県独自の仕組みづくりが求められている。また、新たな推進組織を作ることで、取り組みを強化することができると評価するのは時期尚早である。新たな推進組織の設置よりも、温室効果ガスの大幅削減につながる仕組みを県独自に検討、導入するべきである。現状では、推進組織を作り、普及啓発だけで終わってしまうように思えるので、具体的に何をするのか、現状の課題分析を丁寧に説明することを求める。

 

以上