【アクション報告】神戸製鋼所 株主総会2023 株主としてアクション(2023/06/22)

 20236月21日(水)、株式会社神戸製鋼所の第170回定時株主総会が開催されました。当会は、神戸製鋼所経営陣をはじめ、他の株主の方々へ石炭火力事業の見直し、事業における早期脱炭素化を訴えるため、2021年からメンバーが株主となり、株主アクションを行っています。また、神戸製鋼所グループの事業における脱炭素に関する課題をとりまとめた、「事業リスク・レポート」を編集・発行し、株主総会に参加される株主の方々へ配布しています。

 

今年も、当会のメンバー以外からも、石炭火力事業におけるアンモニア混焼のほか、グリーンスチールの動向など、脱炭素に関連する質問が相次ぎ、関心の高さが伺えました。

2023年 事業リスク・レポート

株主総会でのやり取り

【※質疑の内容は、内容を簡略化しており、正確性を保証するものではありませんので、ご留意ください。】

 

Q:神戸発電所においてアンモニア混焼を実施するとあるが、削減効果がどの程度あるのか。アンモニア20%混焼でCO2排出量-4%という話も聞いている。

 

A:(北川 二朗 電力事業部門長)アンモニア混焼は、石炭火力のカーボンニュートラル化にとって重要とされている。国のエネルギー基本計画においても、2030年の電源構成において水素・アンモニア1%と位置付けられている。こうした取り組みは、G7の中でも認められている。各重工メーカーの実証実験が予定されており、NEDOJERA2024年を目処に20%混焼が予定されている。当社でも、アンモニアの調達先も含めて検討中である。

 

Q:再生可能エネルギーのコストが安くなっている。石炭は価格高騰もあるのに、なぜ石炭火力に拘るのか。

 

A:(北川 二朗 電力事業部門長)再生可能エネルギー、特に太陽光発電について、大規模なものにおいてコスト低下があり、12.5円という数値もある。しかし、接続費用や設備等の費用を加味すると、26.2円となり、必ずしも再生可能エネルギーが安いとは言えない。また、送電トラブルなどが生じた場合、安定供給するには火力が一定必要である。

 

Q:気温上昇を1.5℃までに抑制するには、先進国において2030年までに脱石炭の必要性があるとされている。また、2020年からの10年間の取り組みが重要とされており、国連事務総長をはじめ、1.5℃への貢献が呼びかけられている。神戸製鋼所は、2030年までの取り組みとして、神戸発電所1-2号機についてどうするつもりか。また、アンモニア混焼については、G7で認められたとは言い難い。各国政府高官からも、懐疑的な意見がメディア上で表明されているのは把握しているか。先の株主からも質問があった、アンモニア20%混焼でCO2排出量-4%というレポートもある。神戸製鋼所として、どのような数値を持ち合わせているのか。

 

A:(北川 二朗 電力事業部門長)パリ協定においては、各国が目標を掲げる形になっている。日本政府の方針として、2030年に2013年と比べて46%削減となっている。

 アンモニア混焼におけるご指摘の点については、アンモニアの種類が色分けされており、それによって前提は大きく変わる。たとえば、グリーン(再エネ由来)やブルー(CCS利用)であれば、20%混焼で‐4%という数値にはならない。

 神戸発電所1-2号機については、SC(超臨界圧)であるが、効率が高いことから国の方で示されている42%という非効率石炭火力には該当しない。2030年以降も、1-2号機は設備の事情にもよるが使用できると考えている。

 2030年までの対策としては、バイオマス(下水汚泥)混焼などに取り組む予定としている。最終的にアンモニア混焼については、国等の実証実験の状況を踏まえて取り組むかどうか検討する。

 

G7においてアンモニア混焼が認められたのか?

 今回、神戸製鋼所の株主総会において、執行役員の北川二郎氏(電力事業部門長)は、株主からのアンモニア混焼の質問にG7で認められた」と回答がありました。しかし、G7における合意背景、内容を読み違っている恐れがあります。

 神戸製鋼所ほか、石炭火力発電所を抱える電力会社などは、排出削減策としてアンモニア混焼を取り組む方針を明らかにしています。しかし、石炭火力におけるアンモニア混焼は、アンモニアの製造時の環境負荷、削減効果が十分ではない等の問題があり、国際的な理解が十分に得られているとはいえません。

 G7の合意においては、水素とその派生物(アンモニア)の電力部門での利用に関しては、1.5℃の道筋やG7で合意された2035年までの電力部門の脱炭素化に整合する場合、また、CO2以上の温室効果係数を持つ一酸化二窒素(N2O)や、大気汚染物質の窒素酸化物(NOx)等の排出増を避けるなど多くの厳格な条件が付された上で、「電力部門での利用を検討する国があることに留意する」と述べるに留まっています。

 こうした厳格な条件が加わっていることからも、日本政府が推進する火力発電における水素・アンモニア混焼が“脱炭素技術”としてG7で承認されたことを意味するものではありません。

 

 

 今や、石炭火力発電所の存廃は、地域における環境影響の話に留まらず、気候危機が深刻化するなかで、国際政治の場でも重大な問題となっています。神戸製鋼所は、日本政府の拡大解釈を鵜呑みにし、石炭火力・アンモニア混焼に固執するのではなく、脱石炭の道筋を描き、1.5℃目標の実現に貢献するべきです。当会は、株主としても神戸製鋼所に事業転換を求めていきます。

【参考報道】G7広島サミットにおけるアンモニア混焼に関する記事