【アクション報告】株主総会2024 2030年以降も続く石炭火力:神戸製鋼所の脱炭素化計画に疑問(2024/6/19)

2024年6月19日(水)、株式会社神戸製鋼所の第171回定時株主総会が開催され、当会のメンバー等が現地に赴きました。当会は、神戸製鋼所の経営陣や他の株主に対して石炭火力事業の見直しと早期の脱炭素化を訴えるため、2021年から株主としてアクションを行っています。また、神戸製鋼所グループの事業における脱炭素に関する課題をまとめた「事業リスク・レポート」を編集・発行し、株主総会に参加される株主に配布しています。

(今年はJRの列車大幅遅延の影響で、配布が遅れたことお詫び申し上げます。)

2024年 事業リスク・レポート

株主総会における質疑(一部)

【※質疑の内容は、内容を簡略化しており、正確性を保証するものではありませんので、ご留意ください。】

 

Q: 全国の火力発電所が老朽化しており、トラブルも多い。神戸製鋼所の発電所への期待は大きい。報道では、2030年までに石炭火力を終了するという話もあるが、神戸製鋼所は2050年まで石炭火力を続けるのか、それとも早期に終了するのか。

 

A: 勝川四志彦(社長):当社は、(石炭火力発電における)アンモニア混焼、バイオマス、CCS(炭素回収・貯留)、CCUS(炭素回収・利用・貯留)などの技術を通じてカーボンニュートラルを目指しています。2050年以降も、アンモニア混焼から100%専焼への移行を検討しており、2050年時点では石炭火力を完全に終了する計画はありません。

 

Q: 神戸発電所の売電先である関西電力との契約について、原則30年間とされていますが、2029年に契約終了となるのか。

 

A: 勝川四志彦(社長):電力需給契約には守秘義務があり、詳細はお話できません。契約は2029年で終了するわけではなく、新たな購入先を見つける必要があります。現状では、アンモニア混焼はコストが高いので、コスト削減に努力し、2050年のカーボンニュートラル達成を目指します。

 

Q: カーボンニュートラルに関する中期経営計画の中で、電力部門の削減目標が記載されていないのはなぜか。鉄鋼部門では具体的な数値が示されている。電力部門でも他社のように数値目標を持つべきではないか。

 

A: 吉武邦彦(執行役員・電力事業部門長):カーボンニュートラルに向けてさまざまな技術があり、神戸発電所1-2号機ではアンモニア混焼の設備改修を予定しています。使用するアンモニアの種類によって排出量が異なるため、具体的な目標値は検討中です。また、アンモニア混焼については国の実証実験が進行中であるため、現時点では数値として示せていません。カーボンニュートラルのロードマップに従って取り組みを進めています。

 

Q: アンモニア混焼はコストが高く、再生可能エネルギー(太陽光、風力)のコストが安い。IPCCの報告書でも水素やアンモニアの削減効果は低いとされている。社長はIPCCの報告書を知っているか。なぜコストが高く削減効果の低いアンモニアに投資するのか。また、「あしたにいいことKOBELCO」という広告はグリーンウォッシュではないか。

 

A: 勝川四志彦(社長):「ICPP」(正しくはIPCC)の報告書については認識しています。

 

  吉武邦彦(執行役員・電力事業部門長):アンモニアは熱量的には石炭と比較して劣りますが、燃料調達コストが高いため、国の支援制度を活用してコスト低下を図ります。太陽光発電も過去には高コストでしたが、現在はコストが低下しています。アンモニアについても同様に支援を通じてコスト低下を目指します。国のエネルギー政策では、多様なエネルギーを活用し安定供給を実現することが求められており、火力の脱炭素化もその一環です。カーボンニュートラルのロードマップに従い取り組みを進めています。

 

  永良哉(代表取締役副社長執行役員):「あしたにいいことKOBELCO」という広告について、企業理念に基づくものであり、グリーンウォッシュではないと考えています。CO2排出削減に製品・サービスで貢献するという理念を示しています。

石炭火力の継続に固執する神戸製鋼所

今年の株主総会で質問に立った株主は14人で、そのうち6人が脱炭素や石炭火力に関する質問をしました。脱炭素関連の質問数は過去最多であり、脱炭素への関心の高さが強くうかがえます。一方で、神戸製鋼所の石炭火力事業に関する姿勢としては、2030年以降もアンモニア混焼などを通じて発電を継続する意向が示され、2050年時点での終了の意思は確認できませんでした。また、アンモニア混焼による削減効果についても具体的な説明がされておらず、脱炭素の早期実現に向けた有効性は明確にされていない状況です。

当会では、今後も株主として神戸製鋼所の経営陣に対して火力事業の早期見直しを求め、持続可能な未来に向けた取り組みの強化を促してまいります。

 

(これまでの株主総会アクション)

【アクション報告】神戸製鋼所 株主総会2023 株主としてアクション(2023/06/22)

【アクション報告】神戸製鋼所 株主総会2022 株主としてアクション(2022/06/22)

 

(関連報道)

神戸製鋼の勝川社長、業界再編「積極的にしようと思わない」 株主総会(神戸経済ニュース2024/6/19)

神戸製鋼、火力発電「50年以降も続ける」 株主から質問相次ぎ、CO2回収技術など説明(神戸新聞2024/6/19)